2012年7月29日日曜日

「夢を見た」シリーズの今までの分まとめ


2012年07月23日(月)
携帯が鳴り、連絡の途絶えた女の声が明るく私の名を呼んだ。
直後にその女と寝ていた。
いつの間にかその女は、会わなくなって久しい女に変わって別の旅館を探していた。
ひと部屋取れた。
また彼女が払いをした。
部屋にはまだ先客が居座っていた。
私は早く二人で話したかったのでイラついた。

2012年06月13日(水)
夕方、母の携帯から道に迷ったという連絡が入る。
場所を確認すると、ほど近くはあるが面倒な場所のIC付近にいる。
タクシーで帰るらしい。
私の脇で、妙にいけ好かない男があれこれ私に助言する。
私はそれよりも帰った後の母が思う、老いたという落胆ばかりを気にかけている。

2012年04月25日(水)
からりと襖を開けると、去年の秋口に死んだ先輩が菓子折を手に立っていた。
私が最初に入った会社で最初に仕事を教えてくれた人だが、悪い酒ばかりで何度も不快に思い、彼も私を疎んじていた。
しかし、そこに立つ彼はシラフで機嫌の良いまろやかな笑顔を私に向けていた。

2012年04月22日(日)
死んだ猫を追って畳に潜ると、嵐の後の酒場ばかりの街角に降り立った。
夜がどれ程の深さかはわからないが、誰一人いない。
嵐の名残の風には粘りがあり、行灯が倒れ、千切れたポスターが散らばる路面は濡れている。
店は一軒も開いていなかった。
私に行くアテはない。

2012年04月18日(水)
宿に泊まった。
妻と娘と友人と、そして私がひどく不人情な扱いをした女がいた。
彼女は低い声で娘と家具のカタログを見つつ、私もこんな嫁入り道具が欲しかったわと呟き、私の名を呼んだ。
私は二人に背を向け聞こえぬふりをした。
私はやはり不人情な上に卑怯でもあった。

2012年04月17日(火)
『一番綺麗な私を抱いたのは・・・』と同じフレーズだけが頭の中で響き続けてていた。
俺は同年輩の男達と閑散とした車道をひたすらユックリと走り続けていた。
やがてビルに囲まれた広い十字路に行き着いた。
皆楽しそうだったが俺一人気後れがしてスルスルと路地に身を隠した。

2012年04月09日(月)
休日の午前中。
少し縮尺がつまった自宅の一階の洗面に向う途中、随分前に死んだはずの父がいてお互い身をはすかいにしてすれ違う。
父は毒気の抜けた様な、妙に小ざっぱりした顔つきで「おぅ」と言う。
俺も「どうしたのさ。死んだんだろ」と聞く。
父は優しく微笑みかけた。 

2012年04月08日(日)
俺は、昔、従弟が住んでいた団地の押入れに隠れて怯えてた。
積み重なった布団の上と天井とのわずかな空間に身を横たえて、汗まみれで悔やみ続けていた。
ひとを殺めてしまった。
死体は山中に埋めていたがそれはどこだったか。
もっと深く穴を掘るべきだった。
朝にはバレる。

2012年04月06日(金)
いきさつのあった女が俺の布団の上に屈み込んで右手を引いて「行きましょう」と当時のままの優しげな声で言いつのった。
俺は女の手が小振りなのに気づいた。
それは別口のいきさつの女の手なので当惑し、生返事をしたがそれでも半身を起こした。
何処に行くのかは、知らない。

2012年04月06日(金)
高曇りの空の下、河口に近い身の丈程の護岸壁に沿って歩いていた。
目の前に上下二段の首都高らしいモノが見える。
目に入るのは灰色だらけでどうにも気が荒む。
左手に貧弱な作りのこれも色のない平屋の群れが見えてきた。
誰一人とも行き交わない。
改めて深々と侘しくなった。

2012年04月06日(金)
深い森に覆われた岬の廃洋館の二階からは穏やかな海が見えた。
床に散ったガラス片をジャリっと踏んだ。
若い女が階段をギシギシ鳴らして登って来た。
突風で木々がごぉと騒いだ。
階段を登りきり、女が顔をあげた。
その顔は猫だった。
俺は叫び声をあげたが、その女を受け入れた。

2012年04月05日(木)
目を覚ますと、幾重にも折り重なった緑濃い深山にある送電線の鉄塔の根元にいた。
月明りが凄く、銀灰色の金網や鉄塔を鈍くと照らしていた。
遠くにチラリと街の灯りらしきものが見えた。
あそこに辿り着けるのかと思うと、むやみと心細くなって立ち尽くした。
フっと月が陰った。

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